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THIS IS IT

このページでは現在ストックしているアイテムの中からある特定の一本だけにスポットを当て、通常の商品カタログのページとは異なる形でご紹介してみたいと思います。

今回紹介するのはオメガのレクタングル(角型)です。そもそも時計というものは丸いものですが、ポケットウォッチから腕時計の時代へと変わり、徐々に普及し始めた1920年代頃にはこういった角型時計も一般的になってきたようです。

丸型の時計との一番の違いはデザイン的な幅の広がりとでも言えば良いのでしょうか、角型の時計はより自由な発想で作られていたように感じます。このオメガはデコラティブなルックスではなく、すっきりとしたシンプルなスタイルが特徴です。


〜個性的なデザインのユニークな文字盤〜
一見して特徴のあるデザインの文字盤がまず目に飛び込んできます。1940年代頃までの腕時計の文字盤の最もポピュラーなデザインといえば、オールアラビア数字のインデックスのもので、これは丸型であろうと角型であろうと共通しています。ところが、このオメガはいっさい数字を使わずに通常外周にある場合が多いレイルウェイトラックを中心に寄せて丸くプリントし、視覚的なバランスを考慮して針もやや短めのものが採用されています。さらにツートーンになっているところもひと手間かかっていることを感じさせてくれます。ちなみによくこの種のデザインはアールデコの影響を受けたものとされています。

〜シンプルなケースデザイン〜
これといってデコレーションされたところはなく、角型にしては極めてシンプルなデザインのケースです。ところが、よく見てみるとケースサイドの面からラグにかけてのラインはやや複雑なシェイプになっており、細かい部分で存在感を主張しています。全体的に細かな傷が多数ありますが、表面が研磨された形跡はなく、いわゆる新品当時からのオリジナルコンディションではないかと思われます。

〜裏蓋の刻印〜
ケースバックに目を向けると当時の所有者のものと思われる名前や日付らしき刻印がありますので、恐らく何かの記念に買った(あるいは贈られた)ものだと想像出来ます。こういった刻印が入っている事を好まないお客様もいらっしゃるようですが、むしろ刻印によってその時計が新品だった当時をより正確に知る上で重要なヒントになることもあるのではないでしょうか。本商品はいわゆる「はめ殺し」になっており、バネ棒で革ベルトを取り付けるタイプではなく、ラグの間にバーが固定された仕様です。オープンエンドの黒いピッグスキンのストラップを装着しています。

〜十分なコンディション〜
角型の時計は丸型と比較した場合、元来ケースそのものが弱く、気密性も落ちるため、長い年月を経ている時計であれば、コンディションの良いものが極端に少なくなってしまうものです。特にゴールドケースなどの場合はほんのわずかでも歪みが生じていることも多く、湿気等の影響を受けてしまい、文字盤や針、ムーヴメントにまでダメージが出やすいと言えます。一方本商品のようにステンレススチール製であれば、素材が硬い分、歪みなどが生じる確率はずいぶん低くなり、比較的状態の良好なものが見つかる可能性も高くなります。前述のように多少の傷はありますが、総合的に判断すると十分な状態ではないかと思います。

〜刻印の謎〜
いかにも手彫りされた雰囲気の裏蓋の刻印に目を向けると"STEN"という男性のものらしき名前が入っています。さらに下の段には「19 23/1 38」と刻印されており、恐らく1938年1月23日を指すのではないかと思います。この日が"STEN"という人物にとってどのような意味のある記念日なのか知る術もありませんが、この当時から70年以上も経った現在弊店の店頭に並んでいることを考えると不思議な縁を感じます。ちなみに1938年1月23日はジャイアント馬場の誕生した日でもあります。

〜裏蓋を外す〜
裏蓋を外してみるとまずこのような状態になり、ケースと裏蓋とムーヴメントに別れます。一般的な角型時計は大抵がいわゆるスナップバックの非防水で、このオメガも同様です。リュウズはやや小さめに感じますが、交換されているような雰囲気はなく、オリジナルではないかと判断しています。オメガの腕時計のリュウズにはΩマークが入っている場合が多いものですが、この時代はまだそういったパーツが採用されていません。

〜ダストカバー〜
大きな特徴のひとつがムーヴメントに覆われたこのダストカバーです。前述の通り、角型の時計はケース自体が弱いため、湿気等の影響を受けやすいという欠点を補うためにこのようなカバーが取り付けられています。湿気だけでなく、昔の腕時計は埃も大敵だったと言われています。水気によるサビの発生も大問題ですが、細かな埃が入ってしまい、正常な動きを妨げ、不具合の原因になることが少なくなかったようです。したがって、ダストカバー付きモデルには比較的コンディション良好なものが多いと言えます。なお、このモデルに搭載されているムーヴメントと同型を採用したオメガの他の角型時計もほとんどが同じ防塵仕様になっています。リュウズの部分は巻芯の周りをカバーのパイプが保護していたり、外さなくても緩急針を動かして精度の微調整が出来るようになっていたりする点が合理的になっています。

〜角型ムーヴメント"Cal.T17"〜
角型の時計でも丸型のムーヴメントを搭載している場合もありますが、一般的に角の時計なら角型のムーヴメントを搭載しているものの方が評価されているようです。古いオメガであれば、希少性などの理由から"Cal.20F"が最も評価が高いと思われますが、一方でこの"Cal.T17"は現在のアンティークウォッチのマーケットの中ではあまり注目されていないように感じます。玉数は多い方かも知れませんが、だからといってどこにでもゴロゴロあるわけではありませんし、比較的手頃な価格で良品を入手出来る可能性も高いかも知れません。

〜小型化させるための工夫〜
テンプ周りを取り外すとムーヴメントを小型化させるための工夫が見られます。4番車と噛み合うガンギ車の受けがだいぶ低くなっていますが、これはこの上を天輪が回転するように設計しているためだと思われます。恐らくムーブメントそのもののサイズと天輪のサイズ等を十分に考慮し、それらをバランス良くレイアウトし、制限された条件の中で無理なくきっちりと動かすためだったのではないでしょうか。この時代は丸型でも直径30mm前後のケースサイズの時計が流行していましたので、角型でも小型化を目指すのは当然の流れだったようです。

〜独特の形状のアンクル〜
時計の動作を正常に制御させる上で重要な役割を果たす「アンクル」という部品ですが、一般的な時計に組み込まれるものとは異なる形状になっている点もこのムーブメントの特徴のひとつです。一般的なものはこういう形をしているものですが、この"Cal.T17"では変わった形になっていて、同じような形状だった"Cal.20F"からの影響を感じさせます。レディースウォッチのムーヴメントにも見られますが、限られたスペースの中に必要な部品を効率よく組み込むための工夫のひとつだったと言えそうです。

〜クラシックな風情を楽しむ〜
そもそもは丸型だった機械式時計のムーヴメントを角型にするには設計面での制約もだいぶ多くなります。ある程度技術力のあるメーカーでなければ角型の機械を手がける事が出来なかったなどと言われることもありますが、合理的に各パーツを配置しつつ、同時に耐久性も確保しなければならなかったのは重要な課題だったかと思われます。自動巻きの機構なども各メーカーごとの試行錯誤が見られ、興味深いものですが、同様に各社の個性が感じられるのも角型のムーブメントの特徴ではないかと思います。

〜質実剛健な年代物らしさ〜
ゼンマイの巻き上げを行なうための丸穴車、角穴車、さらにそれらが取り付けてあるブリッジを外すと香箱が出てきます。香箱はゼンマイが収められた歯車で厚みがありますが、まさにここが動力源になり、時計を動かします。最も力のかかる部分だけに香箱の中央にある芯の部分は太く長くなっていて、かなりしっかり出来ています。古い時計の魅力はデザイン面も大きな割合を占めていますが、各部品の材質や作り込みの良さ、重厚さなども挙げられます。現代の時計の部品なら、「小さく、細く、薄く」作れる部品もかつてのものはその逆に「大きく、太く、厚く」作られていて、それが強度につながっているのです。よほどの大きなトラブルが起きなければ、古いものほど実は長く使う事が出来るなどと言われる所以はこういったところにあります。

〜現在も時を刻む1930年代のオメガ〜
オーバーホールを終えた直後、快調に動作している様子です。決して超高級機というわけでもありませんし、超レアなムーヴメントでもありませんが、デザインや状態等を考慮してみるとかなり魅力的な一本だと思います。年代物ゆえに少々の誤差は生じますが、現在も十分な実用性を持っています。今から70年以上も前の腕時計ですが、最低限注意しなければならない点さえ意識的に守ればなんら問題なく、普通に使用する事が出来ます。古い時計はすぐ壊れてしまうようなイメージもあるかも知れませんが、このオメガのようにある程度ちゃんとしたコンディションがキープされていて、今後もきちんとメンテナンスを重ねていけば、それほど厄介な問題が起こるわけでもなく、むしろこれからも長く使っていく事が出来るのです。

〜角型ウォッチの魅力〜
アメリカの時計メーカーが手がけていた昔の角型の腕時計はアメリカという国の国民性を象徴しているかのようにどことなく派手にデザインされたものが多く作られていました。実際オメガをはじめとするスイスの時計ブランドも対米輸出向けには当時のアメリカ人が好んでいた金色(金張りや金無垢)のケースで、デザイン面でもデコレーションされた優雅なスタイルのものを多く手がけていたようです。このオメガは極めてシンプルなすっきりしたデザインで、ケースの素材もSSですから、アメリカ向けの製品ではなく、ヨーロッパのどこかの国で販売されたものなのかも知れません。丸型と比べて状態良好なものが圧倒的に少ない事から現存数も少ないのが角型時計。シャツの袖口からチラッと見えた時、実にオシャレに見えるのものです。


いかがだったでしょうか?丸型とは違ったテイストを楽しむのにぴったりのレクタンギュラーケース。シンプルでも個性的で十分な存在感を持ったこのオメガ。バランス良く、十分なオリジナル性を保っており、おススメです。価格等についてはこちらをご覧下さい。

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